国立新美術館「ウィーン・モダン展」でクリムト 、シーレを観て過ごす優雅な休日

[ 最終更新日 11.01.2021 ]

2019年の今年は、日本とオーストリアの外交が始まって150年になります。それを記念して国立新美術館で開催中の「ウィーン・モダン クリムト 、シーレ 世紀末への道」へ行ってきました。見どころや感想、おすすめグッズなどをご紹介します。

国立新美術館へのアクセスと所要時間

国立新美術館は六本木7丁目に位置しています。東京メトロ千代田線の乃木坂駅が最も近く、6番出口から直結とアクセス良好です。日比谷線の六本木駅からだと4a出口から徒歩5分、都営大江戸線の六本木駅からだと7番出口から徒歩4分程度です。
展覧会にかかる所要時間は2時間程度みておきましょう。

ウィーン・モダン展とは

クリムト展については先日の記事でレポートしていますが、ウィーンでは19世紀末から20世紀初頭にかけて、絵画のほかにも建築や工芸、デザイン、ファッション、音楽など多岐にわたる分野において、装飾的で煌びやかな文化が開花しました。この時代の「世紀末芸術」が発展する以前、18世紀のマリア・テレジアに遡る時代から、基礎が築かれています。

ハプスブルク家の女帝マリア・テレジアは、1740年代から「啓蒙主義」に基づいた変革を行います。啓蒙主義とは簡単にいうと「これまでの古い慣習は刷新して、合理的なものの考え方をしよう!」という思想のことです。息子のヨーゼフ2世もこの考え方を引き継ぎ、宗教の容認や病院の建設など、行政・法律・経済・教育において様々な改革を実行します。これによってウィーンはヨーロッパ文化の中心地へと変貌を遂げるのでした。

今回の展覧会は豪華絢爛な芸術につながっていった軌跡を辿る内容で、絵画以外にもインテリアデザインやグラフィックデザインなども楽しめる、ウィーンの総合的な展覧会となっています。

なお7月14日はクリムトのお誕生日だそうで、7月15日までに来館すると、クリムトの写真とシーレの自画像がプリントされた特性うちわをお祝いにもらえます(笑)

見どころ1:グスタフ・クリムト作品47点

「クリムト、シーレだけじゃない」と謳ってはいるものの、やはりクリムト作品は一番注目したいところです。初期の頃やデッサンも含め、47点もの作品が集まっていて見応え十分です。その中から有名な油彩画を4つご紹介します。
クリムトについて詳しく知りたい方はこちらの「グスタフ・クリムトってどんな人?」も参考にしてみてください。

旧ブルク劇場の観客席

クリムトを一躍有名にした初期の名作です。ブルク劇場は建て替えのため一度取り壊されるのですが、そのときの最終公演の様子だそうです。劇場なのに観客席側というのがおもしろいですね。興奮した様子の多くの観客が、表情豊かにしっかりと写実的に描き込まれています。皇帝フランツ・ヨーゼフ1世は大絶賛。クリムトは26歳にして皇帝賞を授与されたのでした。
なお舞台側はクリムトの親友フランツ・マッチュが描いています。

この作品を観たとき、あまりの美しさに鳥肌が立ちました。暗闇の中で若い男女が向き合い、愛を誓い合っている様子が、消え入りそうに繊細なタッチで描かれています。男女の上方からは幼い子ども、老人、物憂げな女性、死者がその様子を見つめています。単純に愛し合うことだけに焦点を当てたのではなく、危うさをも孕んでいることが背景の神秘的な描写からうかがえます。そして両端に太く配置されたフレームは、金色にバラの絵が施された日本様式を取り入れたデザインです。

パラス・アテナ

これまでの古い美術を脱却して自身のスタイルを追求すべく、ウィーン分離派を結成したクリムト。この作品は分離派の拠点を新しく開館する際に描かれました。黄金の甲冑をまとった女神様の姿で、右手には「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」を持ち、首には恐ろしいゴルゴン*がいます。新しい世界へ踏み出す闘志が表れています。

*ゴルゴン:ギリシャ神話に出てくる、視線だけで人を石にする魔物。妖女ゴルゴンは3姉妹で、3女がメドゥーサです。

エミーリエ・フレーゲの肖像

エミーリエ・フレーゲはクリムトが最も愛したといわれる女性です。ウィーンでファッションのサロンを経営する聡明な起業家、いわゆるキャリアウーマンでした。作品でも金色の飾りや個性的な柄の入った、個性的で素敵なドレスを着ています。
でも解説を読むと、エミーリエ本人はこの絵をあまり気に入らなくて売ってしまったそうな・・・もっと写実的に描いてほしかったのでしょうか。クリムト可哀想・・・

ちなみに、エミーリエのドレスをイメージし、文化服装学院の学生さんが仕立てた衣装も展示されています。おしゃれすぎて普通の人には着こなせませんね。

見どころ2:19世紀ウィーンの象徴・リング通り(リングシュトラーセ)の発展

オーストリアの皇帝といえば、フランツ・ヨーゼフ1世が有名です。国民から絶大な支持を受け、なんと68年も皇帝を務めました。皇后は絶世の美女といわれるエリーザベトです。

で、そのフランツ・ヨーゼフが1957年に行った大胆な都市計画があります。それはウィーンの旧市街を取り囲んでいた城壁をすべて撤去し、リング通りを整備すること。これまで閉鎖的だった都市に次々と新しい文化的建造物が建ち並ぶようになり、豊かな芸術を育む大都市へと発展していきました。

展覧会ではその変遷の様子を絵画や3D映像、模型などで体感することができます。ウィーンの観光名所となっているリング通りは、この時代から始まっていたんですね。

見どころ3:ウィーン工房のモダンなデザイン

ウィーン工房とは、ウィーン分離派のメンバーだったヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザーが、1903年に設立したデザイン事務所のような組織です。複数名のデザイナーが所属し、インテリアデザインをはじめ、宝飾品、ドレス、日用品のほか、ポスター、書籍の装丁といったグラフィックデザインまで、様々な分野で革新的なデザインを提供していました。なかでも有名なのが「キャバレー・フレーダーマウス(こうもり)」という文学キャバレーのインテリアデザインです。

私はマリア・シュトラウス=リカルツという女性デザイナーのポストカードデザイン「婦人帽ファッション」が気に入りました。現代でいう宇野亜喜良のようなスキャンダラスなスタイリッシュさを感じます。見開きのミニクリアファイルを購入しました。


ユニークなグッズ多数!ミニ図録やマイメロとのコラボなど

ということで、見どころ満載な展覧会です。ミュージアムショップも立ち寄りましたが、ユニークなグッズがいろいろ展開されていました。

図録は2,900円の通常のものと、1,400円の手のひらサイズの「ミニ図録」の2タイプがあります。かわいい。

コラボグッズもいろいろ出ており、サンリオのマイメロディのグッズはこの展覧会のための描き下ろしだそうです。日比谷花壇とのコラボ商品、エミーリエ・フレーゲをイメージしたマイリウムも素敵でした。マイリウムとはドライフラワーをセンス良く詰めたガラス瓶のことです(オイルに浸けた花瓶はハーバリウム)。

このほか、クリムトとエミーリエの刺繍キーホルダーなどがちょっと攻めていて目を引きました。お時間のある方はグッズもゆっくりのぞいてみてください。

以上、ウィーン・モダン展のご紹介でした。これから暑くなる季節、美術館で涼しく文化的な時間を過ごすのもよさそうですね。

「ウィーン・モダン クリムト 、シーレ 世紀末への道」開催概要

東京展

会期 2019年4月24日(水)〜8月5日(月)
会場 国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558
東京都港区六本木7-22-2
アクセス 東京メトロ千代田線「乃木坂駅」青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線「六本木駅」4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線「六本木駅」7出口から徒歩約4分
※駐車場なし
休館日 毎週火曜日
開館時間 10:00〜18:00
※7・8月の毎週金・土曜日は21:00まで
観覧料金 当日券 大人1,600円/大学生 1,200円/高校生800円
(前売り券は200円引き)
お問い合わせ 03-5777-8600

大阪展

会期 2019年8月27日(火)〜12月8日(日)
会場 国立国際美術館
〒530-0005
大阪府大阪市北区中之島4-2-55
アクセス  京阪中之島線「渡辺橋駅」2出口から徒歩約5分
Osaka Metro 四つ橋線「肥後橋駅」3出口から徒歩約10分
JR「大阪駅」、阪急電車「梅田駅」から徒歩約20分
JR大阪環状線「福島駅」、東西線「新福島駅」2出口から徒歩約10分
阪神電車「福島駅」3出口から徒歩約10分
Osaka Metro 御堂筋線「淀屋橋駅」、京阪電車「淀屋橋駅」7出口から徒歩約15分
大阪シティバス「大阪駅前」から、53号・75号系統で「田蓑橋」下車徒歩約3分
※駐車場なし
休館日  毎週月曜日
※ただし、9月16日、23日、10月14日、11月4日は開館し、翌日休館。
開館時間  10:00〜17:00
※8、9月中の金曜・土曜日は21:00まで開館、10~12月中の金曜・土曜日は20:00まで開館
※入場は閉館の30分前まで
観覧料金  当日券 大人1,600円/大学生 1,200円/高校生800円
(前売り券は200円引き)
お問い合わせ  06-6447-4680(国立国際美術館)

 

Posted by
sholo

下町生まれ下町育ちの会社員。ウェブの企画・編集の仕事をしています。ライブに行くこと、三味線を弾くこと、映画を観ることなどが好き。