ショロとポノのライフログ

乳児ボツリヌス症とは?原因から症状・治療法・予防法まで

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乳児ボツリヌス症とは?はちみつが主な原因食品に

2017年4月7日に東京都から、乳児ボツリヌス症で生後6ヵ月の男の子が死亡した、という発表がありました1)。国内での発症例は少ないため、このニュースでその名前を聞いたという方も少なくないかと思います。

乳児ボツリヌス症とは、生後1歳未満の乳児がかかることのある、食中毒の一種です。ボツリヌス菌という名前の細菌が、食べ物を介して乳児の口から身体の中に入り、おなかの中で増殖しながら強い毒素を出すことで発症します。発症するまでの潜伏期間は3〜30日と推定されています2)

日本国内での感染源としては、はちみつが主な原因食品とされており、国内患者の半数がはちみつを食べた後に発症しています。今回亡くなった男の子もはちみつを離乳食として与えられていたと報道されています。東京都福祉保健局ではこの調査結果の詳細な報告と注意喚起を促す発表をしており、この内容はウェブサイトでも確認できます。

▶︎東京都:食中毒の発生について〜1歳未満の乳児にはちみつを与えないでください〜, 2017/4/7報道発表資料

では、なぜはちみつが乳児ボツリヌス症の原因になるのでしょうか?

なぜはちみつが乳児ボツリヌス症の原因になるの?

はちみつは大抵どの家庭にも置いてあり、食中毒などとは縁がなさそうに思えるかもしれません。ヨーグルトに混ぜたり、はちみつレモンにして飲んだり、身体によさそうなイメージすらあります。しかし、1歳未満の乳児には、はちみつを与えてはいけません。その理由は、はちみつにはボツリヌス菌が含まれている可能性があり、身体の防衛機能がまだ成長段階の乳幼児にとっては危険な食べ物だからです。

ボツリヌス菌は先に述べた通り、体内で増殖しながら毒素を出す細菌です。というとすごく怖いイメージがあるかもしれませんが、実はごく一般的な、自然界にはどこにでもある、身近な細菌なのです。ボツリヌス菌は通常土の中にいる細菌のため、食べ物に紛れて一般家庭の食卓にやってきてしまうこともあります。大人であればおなかの中に、菌の増殖を抑える腸内細菌を持っているため、はちみつなどを口にして体内にボツリヌス菌が入ってきても、問題になりません。しかし1歳未満だとまだ腸内細菌が十分にないため、菌がおなかの中で増えやすいのです。

ちなみに、サクラ印のはちみつの食品表示を見てみると、注意書きにもこう記されています。

  ▲はちみつは生モノですから、一才未満の乳児には与えないでください。

乳児にお刺身などの生ものを与えることはないと思いますが、はちみつも同様に与えないようにしないといけません。

続いて、乳児ボツリヌス症の国内での発生頻度と、かかってしまった場合どのような症状が出るかを説明していきます。

乳児ボツリヌス症の発生頻度と症状

発生頻度は過去17年間で19例

乳児ボツリヌス症は、病院で発生が確認されれば、必ず届け出が必要だと決められています。国内の発生数はさほど多くはなく、1999年から2016年の間に19例が報告されています。

乳児ボツリヌス症 年別報告数

1999年 1例
2000年 0例
2001年 0例
2002年 0例
2003年 0例
2004年 0例
2005年 3例
2006年 2例
2007年 2例
2008年 1例
2009年 0例
2010年 1例
2011年 5例
2012年 0例
2013年 0例
2014年 0例
2015年 1例
2016年 3例

※2016年は10月28日現在報告数
NIID 国立感染症研究所:発生動向調査年別報告数一覧(全数把握)より作表

症状としては便秘と麻痺症状が中心

乳児のおなかの中でボツリヌス菌が毒素を作りながら増殖すると、この毒素を身体が吸収して、症状を起こすことがあります。具体的には、

  1. 便秘状態が数日間続く
  2. 全身の筋力が低下する(脱力状態になる)
  3. ミルクを吸う力が低下する
  4. 泣き声が小さくなる

など、筋肉が緩むことによる麻痺症状が挙げられます3)

「2.全身の筋力が低下する(脱力状態になる)」についてもう少し具体的にいうと、顔つきが無表情になり、頭を支えられなくなるといった特徴があります。また、まぶたが上がりにくくなったり、まぶしいときに光の量を調節する目の動きが鈍くなったりする症状が出ることもあります。
致命率については、1〜3%と低いといわれていますが4)、呼吸困難などが起きることもあり、適切な治療を施さない重症患者では死亡する場合があります5)。今回は国内の初めての死亡例でした。

続いて、もしなってしまった場合の治療法や、そもそもならないための予防法について解説します。

乳児ボツリヌス症の治療法・予防法

乳児についての治療法はないのが現状

大人であれば毒素に対抗するための薬(抗毒素)を投与することができますが、乳児のため、また死亡率が高くないこともあり、この治療法は一般的には行われません4)。つまり乳児ボツリヌス症の治療法は現在のところありません。便秘の症状があるためなかなか毒素が排泄されにくく、発症してから長期間、菌や毒素が乳児の便から検出され続けることになります。

予防法は菌がいる可能性のある食品を与えないこと

離乳前の乳児は、おなかの中で菌に対抗してくれる微生物の発達がまだ完全になっていないため、ボツリヌス菌の感染への抵抗力が低い特徴があります。予防接種はないため、予防するには、ボツリヌス菌に汚染されている可能性がある食品を避けることしかありません。はちみつは1歳未満の乳児に与えないようにすることが大切です。はちみつ以外の原因食品は明らかになっておらず、食品ではなく周囲の環境からの感染ではないかといわれています3)

悲劇を生まないために大事なことは

以上、乳児ボツリヌス症について解説してきました。
その後、クックパッドなどのレシピサイトで、はちみつ入り離乳食が紹介されていたとのことで問題になりました6)。今回乳児が死亡した例についても、そもそも1歳未満にはちみつを与えてはいけないことを知らなかったことが非常識だ、という意見も目立ちます。しかし、現にこういった問題が起きてしまっており、またこういったレシピがおそらく悪気はなく、世の中に出回っているのです。

大切なことは、やはり情報をしっかりと自分で見極める目を養うこと、情報提供する側になった場合には、正しさを追求する意識を持つことではないでしょうか。ブログやTwitterをはじめ、自分が情報提供する側になることも、あるいは人が提供した情報を別の人に伝える立場になる可能性もあるわけです。誰でも簡単にできるからこそ慎重さも忘れずにいられればと思います。乳児ボツリヌス症を知ることに、この記事が少しでも役立てれば幸いです。


1)日本経済新聞:乳児ボツリヌス症で初の死亡例 ハチミツ与える, 2018/12/13閲覧
2)岐阜市:食品安全情報, 2018/12/13閲覧
3)東京都福祉保健局:ボツリヌス菌(Clostridium botulinum), 2018/12/13閲覧
4)国立感染症研究所:ボツリヌス症とは(2017年05月19日 改訂), 2018/12/13閲覧
5)東京都感染症情報センター:ボツリヌス症 Botulism, 2018/12/13閲覧
6)「はちみつ入り離乳食レシピ」多数──クックパッド、楽天レシピなど各社の対応は, 2018/12/13閲覧

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