突然ですが、初めてコスメを“ジャケ買い”しました。「UZU(ウズ)」というブランドの、「EYE OPENING LINER(アイオープニングライナー)」という製品です。この製品のブランディングについて考えてみたいと思います。
かっこいいパッケージデザイン
それがこちらのパッケージデザインです。私はブラウンブラックのアイラインを引ける、赤いパッケージを選びました。正面はこんな感じ。
右側のボコッと飛び出ている部分に製品が入っています。製品ロゴもブランドロゴも製品説明も必要最低限だけ掲載されており、1色刷りです(箔押し加工)。広告要素は一切なし、スタイリッシュでまったく無駄がなく、余白の取り方も計算されていて気持ちがいいです。外箱は再生紙のようで、プラスチックは使用しておらず、触ってみてもボコボコした紙でできている感じです。エコ。
横(下)から見るとこんな感じ。
カサ増ししたりせず、「製品を覆う」という目的に対して必要なだけの装飾しかされていないので、非常にすっきりしていて軽いです。
裏側はこんな感じ。
製品が入っている部分だけ透明になっていて、外から製品が見えます。開封するには左上からペリペリとめくるだけ。
こんなにシンプルで美しいパッケージデザイン、本当に素晴らしいです!
さらに、ブラシカバーを開けてエイリアンの顔が出たら当たりで、もう1本アイライナーをもらえます。ガリガリ君か!ただし、もう1本もらうためには使い終わった後に、自分で六本木の本社に送る必要があります(笑)そういえばなぜエイリアンなんでしょうか。
税抜き1,500円とまずまずのお手頃価格です。
かっこいいカラーバリエーション
カラーバリエーションは全部で以下の13色。パッケージの色と共にご紹介します。
ラインカラー | パッケージカラー |
---|---|
ブラック | 薄ピンク |
グレー | 山吹色 |
ブラウンブラック | レッド |
ブラウン | スカイブルー |
カーキ | サーモンピンク |
バーガンディ (茶寄りの赤ワイン色) | ホワイト |
ネイビー | 薄ピンク |
パープル | レモンイエロー |
オレンジ | ターコイズ |
ライトブルー | アイボリー |
ピンク | ブルーグリーン |
イエロー | スカイブルー |
ホワイト | パープル |
14色目はユーザーと今後開発予定だそうです。色の組み合わせも抜群にいい。全色揃えたい。ピンクなど派手色アイライナーもちょっと引いてみたい気持ちになります。
かっこいいウェブデザイン
EYE OPENING LINERの製品サイトもずば抜けてかっこいいんです。ぜひパソコンで眺めながらスクロールしてみてほしいです。美しい写真とバランスよく配置された説明文がほどよく流れます。
製品を通して実現したい世界観が、サイトからも伝わってきます。製品そのものだけでなく、サイトや広告など何に触れても、同じブランドからは同じメッセージ性が伝わってくることが大事ですね。ブランドとはかくあるべきものと強く思います。
かっこいい品質へのこだわり
パッケージ裏面にMADE IN JAPANと記載がありましたが、アイライナーの筆の部分には、「大和匠筆(やまとたくみふで)」という良質な毛を採用しています。筆づくりの産地で有名な熊野×奈良で、7人しかいない伝統職人さんの熟練の技でできた筆です。
製品本体は8角形をしています。これが手にいい具合にフィットするので持ちやすく、アイラインを引くときにも安定感があり、筆の先端も細くてラインがとても描きやすかったです。細部へのこだわりも感じます。
かっこいい企業精神
新しいブランドUZUを展開するのは、FULOWFUSHI(フローフシ)という化粧品の製造・販売を手がける会社です。製品名を聞くとわかる方も多いかと思いますが、「MOTEMASCARA(モテマスカラ)」や「MOTELINER(モテライナー)」、「LIP38℃」など数々のヒット商品を生み出しました。2017年にはコスメに関する賞をなんと142冠*1)も達成するほどの人気ブランドでした。
日本国内で十分な人気を誇っていましたが、グローバル展開を見据えてブランドの刷新が必要と感じ、FULOWFUSHIは2018年末まででこれまでのブランドを終了。刷新後、初めて展開されたブランドがUZUで、2019年3月にこちらのEYE OPENING LINERが発売されました。14色というカラー展開については、人種や性別、年齢を超えて誰でもメイクを楽しめるようにとの願いが込められているそうです。実際に日本で販売する前にニューヨークでキャンペーンを展開して反響をみていたとのこと。そして日本での販売開始後は当初想定よりも売れたため、4月末頃より取扱店舗が拡大されています*2)。
人気のうちにあえてブランドを終了させ、次の一手を打つとは、だいぶ思い切った戦略ですね。
かっこいいブランディング(徳田祐司さん)
というわけで、誰がデザインしているのかあまりに気になったのでカスタマーサポートに問い合わせましたが、UZUのデザインチームが一丸となって作成されたとのことでした。お返事も比較的早く着たし対応も丁寧で、いい会社な印象を受けました。
ブランディング観点ではどうかも気になり、血眼になって調べてみました。するとフローフシのブランディングをされているのは、株式会社カナリアのクリエイティブ・アートディレクターである徳田祐司(とくだゆうじ)さんということがわかりました!
徳田さんは「い・ろ・は・す」や「福福リップ」、かわいいCMが話題になった卵の「きよら」、山形のお米「雪若丸」などのブランディングやパッケージデザインをしている方でした。主なお仕事の実績はこちらのページに掲載されています。
私が最近気になっていた「SAUDADE TEA(サウダージティー)」という緑茶のパッケージデザインもこの方がされていました(これは公式サイトではなくカナリアの実績ページにリンクさせました。SAUDADE TEAのウェブサイトは乗っ取られているのかアクセスすると何か変になってしまうのが残念すぎます)。すごく素敵です。好み!ただし、EYE OPENING LINERにも関わっているかどうかは残念ながらわかりませんでした。
徳田さんのデザイン思考に関するインタビュー記事もおもしろかったので、興味のある方は読んでみてください。デザインで見せ方を工夫することは、企画・編集の考え方と似ていて、自分が関わることでポジティブな側面を見出し、スポットライトをあててあげることなのだと知りました。私には「瞬間的に魅了する」のはとても難しいと感じますが、徳田さんはそれを巧みにされています。
VISUAL SHIFT「魅力を翻訳することから生まれる、徳田祐司さんのデザイン」, 2018/12/14
以上、EYE OPENING LINERはブランディングの重要性について考えさせられた素敵な商品でした。
*1)FLOWFUSHI AWARD2017より
*2)PR TIMES「FLOWFUSHI新ブランド「UZU」から発売した1stコレクション EYE OPENING LINERが当初予測の14倍の売上を記録。ユーザーの声により販売店舗拡大が決定。」, 2019年4月22日より