ショロとポノのライフログ

ルーヴル美術館展をもっと楽しむヒント①登場人物・カップル編

ルーヴル美術館

ルーヴル美術館展「愛を描く」が現在、乃木坂にある国立新美術館で開催中です。展覧会のテーマである「愛」、それは誰かが誰かを愛おしく想う気持ちのこと。男女の恋愛はもちろん、親の愛や、息子への愛、あるいは神様への愛など。絵画にはさまざまなカップルが登場しますが、彼らが誰なのかを理解しておくと、鑑賞中に新しい発見が得られるはずです。

そこで今回は、ルーヴル美術館展をもっと楽しむためのヒントとして、絵画に登場するカップルたちの一部をご紹介したいと思います。展覧会に行く予定の方はぜひチェックしてみてください。

Index

前提知識を押さえよう!ギリシア神話とキリスト教

ルネサンス以降、ヨーロッパの画家たちによって絵画に描かれるテーマは大きく2つあります。一つは「ギリシア神話」、もう一つは「キリスト教」です。いずれもヨーロッパ諸国の美術・芸術に大きな影響を与えているので、基礎知識を押さえておけると、今回の展覧会だけでなく、あらゆる美術作品の鑑賞をより楽しめるようになると思います。

ギリシア神話とは?

ギリシャ

「ギリシア神話」とは、最高神ゼウスなどのオリンポス十二神をはじめ、多くの神々と英雄たちが登場する伝承です。紀元前8世紀頃に誕生し、古代ギリシア・ローマ市民たちの一般教養でした。

登場する神々はとても個性豊かで、複雑な人間模様(神々模様?)がドラマチックに展開されています。今回の展覧会のテーマでもある「愛」の表現に絞っても、純愛やハッピーエンドな愛もあれば、悲劇の結末を辿る禁断の愛もあり、中にはドロドロした複雑なエピソードも…。そこにむしろ人間らしさがあり、市民に親しまれてきたのでしょう。

日本の神話『古事記』にも、イザナギ(夫)とイザナミ(妻)という神様が日本を創ったお話が書かれていますが、それとも似ている感じがしますね。

キリスト教とは?

十字架

キリスト教とは、ご存知の通りイエス・キリストを救世主として信仰する宗教です。ユダヤ教が母体となっており、聖書(『旧約聖書』、『新約聖書』)を人生の道標とする書物、つまり聖典としています。キリストは罪ある人間を救済するために自ら十字架にかけられ、その後に復活したとされています。

キリスト教の教えが地中海一帯に伝わったのは、2世紀中頃と言われています。今ではキリスト教の信者は世界人口の3割以上を占め、イスラム教、仏教と並び世界三大宗教の一つ。教派は複数に分かれており、代表的なのはローマ・カトリック教会、東方正教会、プロテスタント諸教会などがあります。

キリスト教では神様=イエス・キリストであり、ギリシア神話の世界のように多神教ではありません。このように両者は性質がかなり異なるため、位置付けも別物として、ギリシア神話のほうは(信仰の対象ではなく)あくまで物語として楽しまれてきたと捉えるとよいでしょう。

ルーヴル美術館展「愛を描く」に登場するカップル紹介

それでは、ルーヴル美術館展「愛を描く」に登場するカップルの一部をご紹介します。ここからは絵画の解説を含みますが、権利上絵画の画像は掲載できないので、実物はぜひ美術館でご確認ください。

カップルのシルエット

人類史上初のカップル
アダムとエバ(イブ)

対象作品《善悪の知識の木のそばのアダムとエバ》

  • ピーテル・ファン・デル・ウェルフ
  • 1712年以降
  • 油彩/板 45 × 35.5 cm

アダムとエバ(イブ)は、旧約聖書の冒頭「創世記」で、神様が創った最初の人類とされる夫婦で、アダムが夫、エバが妻のほうです。
ちなみにアダムのほうが先に誕生し、助け合う仲間を、ということでエバが創られました。

夫婦はエデンの園という楽園に住んでいました。楽園には「善悪を知る知恵の木」が植わっており、ここに実る果実だけは食べてはならないというルールがありました。
しかし、ヘビにそそのかされたエバは、この禁断の果実を食べ、アダムにも与えてしまいました。
この事実を知り怒った神様でしたが、2人とも責任転嫁。楽園を追放されることになったのでした。

作品の舞台となっているのは、エバが禁断の果実を食べようとしている場面です。アダムの足元には悪の象徴と解釈されるトカゲが這っています。エバを驚いた様子で見つめるアダムの表情にも注目です。

ハッピーエンドなカップル
アモル(キューピッド)とプシュケ

対象作品《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》

  • フランソワ・ジェラール
  • 1798年
  • 油彩/カンヴァス 186 × 132 cm

アモル(キューピッド)は愛を司る神様。ヴィーナスの息子で、翼を持つかわいらしい子どもの姿をしています。
アモルが放った矢で心臓をズキュンと射抜かれると、人は恋に落ちるというのは有名な神話です。
子どもの姿の印象が強いと思いますが、青年の姿で描かれることもあり、成長した姿は美青年でした。

天使

一方のプシュケは絶世の美女で、彼女はある国の王女として生まれた人間でした。その美しさは美と愛の女神であるヴィーナスが嫉妬するほど。モテっぷりが気に入らなかったヴィーナスは息子であるアモルに、プシュケを醜い男と結婚させるよう命じました。

しかし、アモルはあまりに美しいプシュケに一目惚れしてしまいます。神様と人間の道ならぬ恋。アモルは彼女を素敵な宮殿に運び、夜の間だけ一緒に過ごすという結婚生活を送ります。ただし、アモルの姿を絶対に見てはいけないという条件付きで、奇妙な日々でした。

ところがある晩、プシュケは眠る夫の姿をランプの灯りで見てしまい、怒ったアモルは飛び去ってしまいます。
その後もさまざまな試練が2人を待ち受けていましたが、なんとか乗り越え、最終的にはめでたく結ばれて幸せに暮らしたとされています。

作品には、アモルがプシュケの額にそっとキスをする瞬間が描かれています。プシュケが初めて愛を意識した無垢な表情、若い2人の佇まいが美しい作品です。プシュケはギリシア語で「蝶」と「魂」を意味しますが、彼女の頭上には蝶が優雅に舞っています。

悲劇の結末を迎えるカップル
アドニスとヴィーナス(アフロディテ)

対象作品《アドニスの死》

  • 作者不明(16世紀後半にヴェネツィアで活動した画家)
  • 1550-1555年頃
  • 油彩/カンヴァス 155 × 199 cm

ギリシア神話の恋も現実の恋愛も、叶うものばかりではありません。次は悲劇の結末を迎えたカップルをご紹介します。

アドニスはギリシア神話に登場する、絶世の美青年。ヴィーナス(アフロディテ)は美と愛の女神であることは有名です。アドニスとヴィーナス、2人は互いに愛し合っていました
しかし、アドニスは危険な狩りに出かけた際、イノシシ(その正体はヴィーナスの恋人)に突き殺されてしまいました。恋人を失ったヴィーナスは悲しみに暮れます。

作品には複数名の神々が描かれていますが、中央で横たわっているのが狩りに出かけ命を落としたアドニス。左で気を失っているのが、悲しみの渦中にいるヴィーナスです。残り3人の女性は三美神と呼ばれる神々で、うち2人はアドニスとヴィーナスの身体をそれぞれ支えており、残り1人は布で遺体を覆うところです。後方にはアドニスの命を奪ったイノシシを、アモルが懲らしめている様子が描かれています。

なお、ヴィーナスは恋多き女神だったので、結婚も複数回、子どもも多く残しています。

本能的な欲望を象徴するカップル
サテュロスとニンフ

対象作品《ニンフとサテュロス》

  • アントワーヌ・ヴァトー
  • 1715-1716年頃
  • 油彩/カンヴァス 73.5 × 107.5 cm

サテュロスは上半身は神、下半身はヤギの男の精霊。日焼けした強靭な身体付きをしており、自然豊穣の化身や欲情の塊として表現されます。いかにも欲望剥き出しの野獣、という感じでしょうか。

一方のニンフは山や泉など自然物の女の精霊で、見た目は美しく色白で、豊満な女性。しかし、よく人間の若者に恋をしてさらっていくなど、妖艶にふるまい男性を惑わせる危険な一面がありました。

ちなみにニンフは川の精、水の精、森の精など、住処によって複数人いるため、絵画によっては複数名のニンフが水浴びをしている様子などが描かれることもあります。

この作品は、欲望に駆られたサテュロスが、無防備に眠るニンフの身体からベールをそっと持ち上げ、美しい裸身にみとれている場面です。両者の性別、体格、肌の色が真逆で、見る・見られるという構造も含めすべて対比的に描かれており、強調のバランスが絶妙です。

無防備な女性の寝姿を一方的に見つめる様子は、ルネサンスから19世紀に至るまで非常によく描かれた構図であり、「ニンフとサテュロス」はその本能的な欲望を表現した典型例といえます。

気になる展覧会グッズもカップルに注目

今回はルーヴル美術館展「愛を描く」に登場するカップルたちをご紹介しました。

お土産の公式グッズ展開もかなり充実していたので、好きなカップルを見つけてグッズ購入してみてはいかがでしょうか。「アモルとプシュケ」から着想を得て作成したという、ラヴ・ルーヴル ブレンド ドリップバッグコーヒーも気になります。

その他、定番のポストカードやクリアファイル、チケットケースはもちろん、ブックマークやキーボルダーなどもかわいいデザインがたくさんありました。お手軽サイズのキャンバスやポスターを自宅に飾って、アートのある生活を楽しむのも良いと思います。

展覧会の公式図録(税込2,800円)は日テレの公式ECサイトでも購入可能です。

開催概要 東京展・京都展

最後に、ルーヴル美術館展の開催概要をお示しします。東京展のあとは京都でも開催予定です。最新情報は各美術館の公式サイトをご参照ください。

ルーブル美術館展

東京展

展覧会名ルーヴル美術館展 愛を描く
会期2023/3/1(水)-6/12(月)
※毎週火曜日と3/22(水)は休館
開館時間10:00-18:00
毎週金・土曜日と6/7(水)、6/8(木)、6/11(日)は20:00まで
会場国立新美術館 企画展示室 1E
https://www.nact.jp/
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
アクセス【電車】
東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線 六本木駅 4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線 六本木駅 7出口から徒歩約4分
※美術館に駐車場はありません


【都営バス】
六本木駅前下車徒歩約7分
青山斎場下車徒歩約5分
港区コミュニティバス「ちぃばす」赤坂循環ルート六本木七丁目下車徒歩約4分
※運行系統、バス乗場については各事業者にお問い合わせください。
主催国立新美術館、ルーヴル美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ、ニッポン放送

京都展

会期2023/6/27(火)-9/24(日)予定
開館時間10:00-18:00
※月曜日と祝日は休館
会場京都市京セラ美術館
https://kyotocity-kyocera.museum/
〒606-8344 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
アクセス【電車】
地下鉄東西線「東山駅」より徒歩約8分
京阪「三条駅」・地下鉄東西線「三条京阪駅」より徒歩約16分
※滋賀方面からお越しの方は、京阪・JR・地下鉄東西線「山科駅」から地下鉄東西線「東山駅」へのお越しが便利です

【バス】
・JR・近鉄・地下鉄「京都駅」から
 A1のりば
 5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
 D2のりば
 86系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
・阪急「京都河原町駅」から
 Eのりば
 46系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
 Hのりば
 5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
・京阪「三条駅」から
 Dのりば
 5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ


【自動車】
・近隣の高速道路IC
 名神高速道路 京都南I.Cから市内へ約10km
 名神高速道路 京都東I.Cから市内へ約7km
・本館北側の専用駐車場をご利用ください(一般用区画:19台、優先車区画:2台/いずれも有料・予約不可)。
火ー金 最初の60分 500円、以後30分 200円、当日最大1,500円
土日祝 最初の60分 500円、以後30分 200円、最大料金なし
※月曜は休場(祝日の場合は営業)
※専用駐車場には限りがありますので、京都市勧業館みやこめっせ駐車場(有料)もご利用ください。可能な限り、公共交通機関のご利用をお願いします。


【自転車・バイク】
本館または別館の駐輪場・バイク置き場をご利用ください(無料)
主催ルーヴル美術館、読売テレビ、読売新聞社、キョードー、京都市
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