3/1より公開されたばかりの映画「グリーンブック」を観てきました。この作品は第91回アカデミー賞で作品賞など3部門を受賞した話題作です。総じてとてもいい映画だったと思うので、ネタバレは控えめに抑えつつ、簡単なあらすじとおすすめポイントを紹介していきたいと思います。
グリーンブックとは?
グリーンブックって、皆さんはご存知でしょうか?アメリカで、黒人が利用可能なホテルやレストランなどの施設情報をまとめた、黒人のための旅行ガイドブックのことです。人種差別が色濃かった1936年〜1966年まで、ヴィクター・H・グリーンによって毎年出版されたそうです。
アメリカでは1876年〜1964年にかけて、黒人の一般公共施設の利用を禁止制限した法律「ジム・クロウ法」がありましたが、舞台はこの時代。88年間って、長いと思いませんか?差別意識の強かったアメリカ南部では特に、このグリーンブックが重宝されたのだそうです。
映画「グリーンブック」のあらすじ
実話を元にしたこの作品、主人公は白人でイタリア系アメリカ人のトニー・リップ。性格はガサツで無学ですが、腕っぷしの強さと調子の良さから、周囲や家族に頼りにされる愛されキャラ。2人の子どもと美しい奥さんを持つ、お腹の出た中年男性です。
ある日トニーは黒人の天才ピアニスト、ドクター・シャーリーの運転手としてスカウトされ、彼の元で働くことに。ドクター・シャーリーは紳士的で教養のある真面目な男性。ホワイトハウスでも演奏するほどの凄腕の持ち主です。そんなドクター・シャーリーは自らの意志で、差別の色濃いアメリカ南部での演奏ツアーをあえて目論み、2人でグリーンブックを頼りに出発することになります。
主な登場人物は、ヴィゴ・モーテンセン演じる白人の運転手、主人公のトニー・リップ。マハーシャラ・アリ演じる黒人の天才ピアニスト、ドクター・シャーリー。アカデミー賞では助演男優賞を受賞しました。そしてリンダ・カーデリーニ演じるトニーの奥さん役のドロレス。主要人物として登場するのはこの3人と、構成がわかりやすいことも特徴といえます。
映画のみどころ
ドクター・シャーリーが訴えかける”What am I ?”
黒人ピアニストのドクター・シャーリーはとても裕福で、カーネギーホール内のお城のような家に住み、玉座のような椅子に腰掛け、お手伝いさんを侍らせながら生活する身分。家族のために一生懸命働いてお金を稼ぐ白人のトニーとは、あらゆる面において真逆の存在です。しかし彼は黒人でありながらも、完全に虐げられ貧困生活を送るような、いわゆる「黒人」ではない。プロの「音楽家」であることは間違いないものの、一方私生活では「夫」にうまくなり切れなかった。
What am I ?
あるシーンで憤るドクター・シャーリーの言葉は、作中では「どう生きるのが正解なのか?」と訳されていました。私には「私はいったい何者なのか?」と聞こえてきて、葛藤する姿には考えさせられるものがありました。
次第に変わっていく2人の心境
旅の最中、黒人であるが故の差別をあらゆる土地で受けるなか、様々な事件が引っ切り無しに起こります。トニーは機転を利かせながら、はじめのうちは「仕事だから」、「生活のために」、ドクター・シャーリーを守ります。
ドクター・シャーリーの技術力の高さには当然圧倒されるトニーでしたが、天才と称されるその演奏の裏で苦悩する姿に、彼の孤独な闘いと勇気を見たのでしょう。「人はいろいろ、複雑なものだ」と彼を慰めるトニー。雇われの立場を越えて、変わっていくトニーの懐の深さと優しさ、そして次第に笑顔を見せるようになっていくドクター・シャーリーの変化に胸を打たれます。
トニー・リップの見事な食いっぷり
人種差別というテーマは重く感じられるかもしれませんが、映画のジャンルとしてはコメディーに分類されています。主人公トニー・リップは、はじめお伝えした通りお腹の出た中年のおじさんなのですが、映画ナタリーによると、この役を演じるヴィゴ・モーテンセンは役作りのために14kgも増量したそう!ピザに丸ごとかじりついたり、フライドチキンをバケツで買って貪ったり、豪快な食いっぷりは見ていて気持ちがよく、思わず笑ってしまいます。
「グリーンブック」は観るべき映画!
白人を救世主の如く描いているという批判もあったそうですが、私は、人は1人では生きられないもので、家族の大切さも感じられる、少し心が豊かになれる、そんな温かい作品に感じました。総じて、明るい。クスッと笑える。皆さんも劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。