宮﨑駿監督の最新映画「君たちはどう生きるか」を鑑賞してきました。「風立ちぬ」以来10年ぶりとなる宮﨑駿監督の長編アニメーション作品とあって、映画館はほぼ満席。あらすじやキャストをご紹介しつつ、感想をお伝えしたいと思います。
なお多少のネタバレが含まれますので予めご了承ください。
「君たちはどう生きるか」作品概要
「千と千尋の神隠し」や「風の谷のナウシカ」、「もののけ姫」など、数々の名作アニメーション映画を世に送り出してきたスタジオジブリ。今回の「君たちはどう生きるか」は、2013年の「風立ちぬ」を最後に引退宣言をされた宮﨑駿監督が、引退を撤回し、自ら監督・脚本を手掛け制作に挑んだ長編アニメーション作品となっています。
宮﨑駿監督が少年時代に読み感銘を受けたという吉野源三郎「君たちはどう生きるか」に着想を得て考案されましたが、内容としては宮﨑駿監督による完全オリジナルストーリーです。
映画公開にあたり積極的なプロモーションをほぼ行っておらず、公式サイトすら立ち上がっていないのにこれだけ話題に挙がっており劇場も満席で、ジブリのブランド力の強さが光ります。
監督・脚本・原作 | 宮﨑駿 |
制作 | スタジオジブリ |
音楽 | 久石譲 主題歌「地球儀」米津玄師 |
公開 | 2023/7/14〜(日本) |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
配給 | 東宝 上映中劇場検索はこちら |
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あらすじ
時は戦時中の日本。航空機の製造を手掛ける会社を経営する父を持つ青年、眞人(まひと)。母は空襲で命を落とし、父の後妻である叔母・ナツコのお腹には、弟の命が宿っていた。
ひどいつわりに悩まされながらも、母として眞人のことを気にかけるナツコだったが、一方で眞人は新しい母を受け入れられず、そっけない態度で接していた。あるとき、身重のナツコがフラリと暗い森の中へと、吸い込まれるように消えていく姿を目にしたが、気にも留めなかった。
ナツコが行方不明になり屋敷中が大混乱になっていた矢先、焼け死んだ眞人の母を知るというアオサギと出会う。ナツコを連れ帰ろうと、眞人もアオサギを追って森の中に佇む古い洋館へと迷い込む。
そこにはペリカンやインコの大群、ヒミと名乗る凛とした少女、家に仕えるばあやと同じ名前のキリコ、「わらわら」など、変わった登場人物たちが生きる摩訶不思議な世界が広がっていた。
母が眞人への想いを込めて遺した『君たちはどう生きるか』という作品が、彼をその世界からの出口へと導いていく。
キャスト(声優)
主人公・眞人 | 山時聡真 |
ナツコ(父の後妻) | 木村佳乃 |
アオサギ | 菅田将暉 |
ヒミ | あいみょん |
キリコ | 柴咲コウ |
正一(主人公の父) | 木村拓哉 |
ばあやたち | 竹下景子、風吹ジュン、阿川佐和子、大竹しのぶ |
感想
賛否両論ある理由としてはおそらく、物語の大半が主人公・眞人の心を映す精神世界から構成されているためでしょう。人によっては置いていかれる感覚に陥るかもしれません。私は理解しようとするよりは瞬間的に「そういうもの」として受け入れ、興味深く鑑賞することができました。
現実世界は美しいことばかりではありません。主人公が自ら頭に付けた醜い傷から流れ出ていた血は、その後の世界で魚を捌く際に流れ出る血、新しい母のお腹に宿っている子を包んでいるであろう血と描写が重なり、「生きること」の必然性を問うている気がしました。本作品では、そんなふうに傷だらけになることもある運命を受け入れ、自ら扉を開けて突き進んでいく主人公の姿に勇気をもらえるはずです。扉を開けるも閉めるも、自分の意志次第なのだから。
母と新しい母と父と、家族の在り方も考えさせられますが、ワンマンな父の姿は思春期の少年にはどう映っていたのでしょうか。多くは語りませんが、彼は複雑な心境も乗り越えていく「選択」をしていきました。宮﨑駿監督ご自身も、父が数千人規模の従業員を有する航空機製造会社の役員をしていて、太平洋戦争中は工場のある宇都宮へ疎開していたようで、幼少期を重ね合わせた作品なのだろうとも思います。
現代アートのような魅力を放つ色彩豊かな映像と、ジブリらしい久石譲氏による美しい音楽が、とても心地よい空間を生み出していました。みなさんもぜひ劇場でご覧になってはいかがでしょうか。