映画「ロケットマン」は単純なエンタメ作品じゃない!エルトン・ジョンの壮絶な人生と素晴らしい音楽

[ 最終更新日 11.22.2021 ]

伝説的なミュージシャン、エルトン・ジョンの半生を描いた映画「ロケット・マン」。8月23日より大ヒット上映中のこの映画を観てきました。監督はあの「ボヘミアン・ラプソディ」のデクスター・フレッチャーです。ミュージカル風の映像と良質な音楽はもちろんのこと、およそ2時間に濃縮された壮絶なストーリーに終始心揺さぶられっぱなしでした。はじめに言っておくと曲は知らなくても十分楽しめるので、曲を知らない方でも大丈夫です。映画の簡単なあらすじと見どころ、映画を観て感じたことをつらつら書いていきたいと思います。

映画「ロケットマン」概要

監督 デクスター・フレッチャー
脚本 リー・ホール
製作 マシュー・ヴォーン
エルトン・ジョン
音楽 マシュー・マージェソン
製作会社 パラマウント映画
配給 パラマウント映画
東和ピクチャーズ(日本)
公開 イギリス 2019年5月24日
アメリカ 2019年5月31日
日本 2019年8月23日
上映時間 121分

キャスト

エルトン・ジョン タロン・エガートン
バーニー・トーピン ジェイミー・ベル
ジョン・リード リチャード・マッデン
シーラ・フェアブラザー ブライス・ダラス・ハワード
アイヴィー ジェマ・ジョーンズ

あらすじ

映画「ロケットマン」は世界的なミュージシャンであるエルトン・ジョン、本名レジナルド・ドワイトの半生を描いた実話です。映画はエルトンが更生施設のカウンセリングで、自身の生い立ちを語るシーンから始まります。

まずはイギリス郊外で過ごしていたエルトンの幼少期から。厳格だった父親は家庭に寄り付かず、母親は子どもに無関心。両親のけんかは絶えず、エルトンは幼少期より孤独を感じて育ちました。そんな彼が唯一祝福すべきものとして神から与えられたのは、音楽の才能でした。国立の音楽院に入学し、寂しさを紛らわすかのようにロックに没入。自分の名前を捨てて「エルトン・ジョン」として生きていく決意を固めたのでした。

レコード会社への公募を通じて、後に長く音楽のパートナーとして活動することになる作詞家のバーニーと出会います。バーニーの書いた美しい詩に、エルトンが曲をつけるスタイルでの曲作りが始まりました。そして代表作「Your Song」をきっかけにデビューが決まり、その後はスター街道を文字通り「一気に」駆け上がっていきます。曲のカリスマ性とド派手なパフォーマンスで全世界に名を轟かせ、彼が送り出す楽曲はすべて大ヒットし、世界中を熱狂させました。

華やかな世界の中心にいた一方で、エルトンの心の中は愛に飢えた少年のままでした。エルトンは同性愛者でもあり、マネージャーの男性などと恋愛関係にもなりましたが、裏切られ心にさらに深い傷を負います。売れ続けることへのプレッシャーと、「誰からも愛されない」という強烈な孤独感が拭えず、ドラッグやアルコールに溺れ、過食症にも陥り、心身ともにボロボロになっていきました。孤独感から抜け出せず、自分も周囲も傷つけることしかできなくなった彼からは、信頼すべきバーニーさえも離れていくのでした。

絶望の淵に立たされていた彼は、超満員の観客の待つステージの裏で、「本当の自分」になるためにある決断をします。

主演俳優タロン・エガートンの歌唱力がスゴイ

まずはなんと言っても、エルトン・ジョンという大役を務めたタロン・エガートンの圧倒的な歌唱力に驚きです。なんと、タロンの歌はすべて吹き替えなし!公式サイトによると、エルトン・ジョン自らがタロンをキャスティングしたのだとか。

あとで知りましたが、タロンはミュージカルアニメ映画「SING」でも、美声で才能溢れるゴリラの少年、ジョニーとして活躍していました。ミュージシャンを目指すことに反対するお父さんに内緒で、コンテストに参加しちゃったあの子です。しかもそのとき歌っていたのがエルトン・ジョンの「I’m still standing」だったなんて!思えばあのゴリラの親子愛にも泣かされました…

タロンの歌うエルトン・ジョンの楽曲には感情を揺さぶられずにはいられません。素晴らしい音楽と軽快なダンス、ステージパフォーマンスは、ミュージカル映画ならではの見どころです。私はApple musicでサントラを全曲ダウンロードしました。

ちなみに、ディズニー映画「ライオン・キング」の楽曲を手がけているのもエルトン・ジョンで、アニメ映画のサウンドトラックとしては異例の大ヒットを記録しています。主題歌の「Can you feel the love tonight(愛を感じて)」のエルトン歌唱バージョンは、グラミー賞最優秀ポップ男性ボーカル賞とアカデミー歌曲賞を受賞しています。

また映画の中には出てきていませんが、1997年に発売したダイアナ妃への追悼歌「Candle in the wind 1997」はきっと聴いたことのある方が多いかと思います。

「ロケットマン」を観てから聴くとより一層心に沁みてきます。

壮絶なエルトンの人生には胸をえぐられる

ということで音楽はもちろんいいのですが、それ以上に私はエルトンの人生そのものに心を揺さぶられて、それはもう苦しく感じられるほどでした。ここからはちょっとネタバレが入ってしまいますがご了承ください。

あらすじでも少し触れましたが、エルトンは世界のトップスター・億万長者として華やかな生活を送る陰で、薬物依存症、アルコール依存症、過食症…などに陥るなど、心身ともにボロボロの状態でした。自身がゲイであることを母親にカミングアウトするシーンでは、泣かれるのではと危惧していたにも関わらず、孤独感を増長させるような言葉を淡々と浴びせられます。これによって、自分はそういう孤独な人生を選択したのだと、過度に認識することになってしまいました。また、久しぶりに会いに行った父親の元には、明らかに自分より愛されて育っている、行儀のいい義弟たちの姿が。そんな光景を目の当たりにして、心穏やかでいられるはずがありません。一度は愛してもらえる女性と巡り会えて結婚もしたのに、同性愛者である本当の自分を偽ることはやはりできず、離婚に至ってしまうという必然も、観ていてどうしようもなくつらかったです。彼女と愛し合って幸せになれたなら、心が楽になれただろうに、人生は複雑です。

私は、世界中から賞賛された大スターが、活躍の裏でこれほどまでに強烈な孤独感に苛まれていたとは知りませんでした。程度の差こそあれ、「愛されない」と自覚することほどつらいことって、なかなかないんじゃないでしょうか。

一般的な恋愛で考えても、愛する人が自分を愛してくれなくなったり、自分ではない誰かへの愛を見せつけられたりしたら、心が傷つくし、なんで自分はこうなんだろうと前を向けなくなることはあると思いますが、それにしたってつらいです。愛って人生において家みたいに、心の安定感を保っておくために必須なものだと思います。

エルトンがうまく愛を見つけられずに苦しみ、もがき、暗闇から抜け出せなかった期間は、あまりに長かったと思います。エルトンが努力によって自分らしさを取り戻し、幸せそうな現在を送っている姿をみて胸をなでおろしました。また、本当の幸せとは、愛せる自分でいられることによって決まるのだなとも感じました。

音楽もストーリーも素晴らしいのでぜひ劇場へ

以上、映画「ロケットマン」のあらすじと感想でした。PG12指定も付いており大人向けの映画で、単なる楽しいミュージカル映画という感じでもないのですが、人生とか、愛とか、大事なことと向き合えた作品でした。ぜひ皆さんも劇場へ足を運んでみてくださいね。

映画「ロケットマン」公式サイト
https://rocketman.jp/

Posted by
sholo

下町生まれ下町育ちの会社員。ウェブの企画・編集の仕事をしています。ライブに行くこと、三味線を弾くこと、映画を観ることなどが好き。